カスハラが起きたとき現場がやってはいけない5つの対応

カスハラが発生したとき、現場スタッフの多くは「とにかく早く収めたい」と考えます。その気持ちは自然なものですが、「その場を収めようとした対応」がかえって問題を長期化させたり、同じ顧客からの繰り返し被害を招いたりするケースが少なくありません。

「謝り続けたら帰ってくれた」「要求を聞いたら落ち着いた」——短期的には収まったように見えても、次の被害の土台になっている可能性があります。

この記事では、カスハラが起きたときに現場がやってしまいがちなNG対応を5つ整理します。何が問題なのかを事前に把握しておくことが、現場を守る体制づくりの出発点になります。

カスハラとクレームの違いや判断基準については、カスハラとは?正当なクレームとの違いと企業が知るべき判断の基準もあわせてご覧ください。

この記事の監修者

堀川 祐二朗氏のプロフィール写真

特定社会保険労務士

堀川 祐二朗

アンド・パートナーズ社労士事務所

労務管理・社会保険手続き・企業の人事労務課題に関する専門的な知見をもとに、本記事の内容を監修しています。

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目次

なぜ「善意の対応」がNG対応になるのか

カスハラ対応のNG行動の多くは、「その場を穏便に収めたい」という善意から生まれます。謝罪する、要求を聞く、話を聞き続ける——これらはクレーム対応の文脈では適切な姿勢です。

しかし、カスハラの相手に対して同じアプローチを取ることは、問題の解決にはなりません。「その場を収めること」と「問題を解決すること」は、カスハラにおいては別の話です。

短期的に収まったように見えた対応が、次の被害を呼び込む構造になっていることがあります。NG対応の何が問題なのかを理解することが、現場が正しく動くための前提になります。

カスハラが起きたとき現場がやってはいけない5つの対応

NG1|ひたすら謝り続ける

「お客様を怒らせてしまった」という気持ちから、とにかく謝り続けてしまうケースがあります。しかし、こちらに非がない状況での謝罪は、「認めた」と解釈されるリスクがあります。

「先ほどは謝っていたのに、なぜ要求を聞いてくれないのか」という展開になると、対応はさらに難しくなります。

謝罪すべきは、こちらに実際の不備があった場合です。不備がない場合やすでに誠実な対応をしている場合は、謝罪を続けることが解決につながりません。「ご不満をおかけしていることはお詫び申し上げますが、この件については対応できません」と、謝罪と対応の可否を分けて伝えることが基本です。

NG2|一人で長時間対応し続ける

「もう少し聞けば落ち着くかもしれない」「上司を呼んだら大事になる」という判断から、一人で対応を続けてしまうことがあります。しかし、一人での長時間対応は複数の問題を生みます。

まず、スタッフが精神的に消耗します。強圧的な言葉や繰り返しのクレームを一人で受け続けることは、短時間でも大きな負荷になります。また、「話し続ければ何か引き出せる」と感じた相手が対応を続けることで、問題が長期化しやすくなります。

エスカレーションの基準を事前に決めておくことが重要です。「〇分を超えたら上司に引き継ぐ」「同内容が繰り返されたら組織対応に切り替える」という判断基準を、チームであらかじめ共有しておきましょう。

NG3|その場で要求を飲む

「今回だけ特別に」という対応が、次回以降のカスハラを招くことがあります。

「前回は対応してもらえた」という実績ができると、次は同じかそれ以上の要求を持ってくることがあります。特に、要求を飲むことで相手がその場で満足した場合、「この会社ではこのやり方が通じる」という認識が生まれます。

その場で要求を飲む前に、「この対応は前例になる可能性があるか」を考える習慣が必要です。対応できない場合は理由を明確に伝え、代替案があれば提示するという対応を基本とします。

NG4|発生の記録を残さない

対応が終わったあと、記録を残さずに「終わった」としてしまうケースがあります。しかし、記録がないと後から複数の問題が生じます。

「そんなことは言っていない」と言われたとき、対応できる手段がありません。同じ顧客から繰り返し被害が起きていても、組織として把握できません。担当者が変わったとき、次のスタッフに状況が引き継がれません。

発生した日時・内容・対応した担当者・相手の発言・こちらの対応内容を記録に残す習慣を作ることが、組織としての対応力を高めます。記録フォーマットを用意しておくと、現場での記録が定着しやすくなります。

NG5|「また来たら対応する」で終わらせる

対応が終わったあと、「また来たらそのとき考えよう」で済ませてしまうことがあります。特に同じ顧客から繰り返し被害を受けているケースでは、この対応が問題の放置につながります。

同一顧客からの繰り返しクレームは、個別の対応で終わらせず、組織として対応方針を検討する段階です。「次にこの顧客が来たらどうするか」を、担当者任せにせずチームや上司と共有しておくことが必要です。

また、担当者が変わったとき、前回の状況が引き継がれていないと同じ問題がゼロから繰り返されます。記録と引き継ぎをセットにする仕組みが重要です。

NG対応が起きやすい職場の共通点

5つのNG対応が生まれやすい職場には、共通した特徴があります。

「お客様を怒らせてはいけない」という文化が強い
クレームへの誠実な対応は大切ですが、どんな相手にも我慢するべきという空気が強い職場では、スタッフがNGと知りつつも謝り続けたり要求を飲んだりしやすくなります。

上司に相談しにくい雰囲気がある
「これくらい自分で対応しなければ」「上司に報告したら怒られる」と感じるスタッフは、問題を一人で抱えてしまいます。相談・エスカレーションしやすい雰囲気を作ることが、現場の対応力を支えます。

対応マニュアルが現場に届いていない
マニュアルがあっても、スタッフが読んでいない・内容を把握していない場合は、実際の場面で動けません。「何が正しい対応で、何がNGか」を研修で繰り返し共有することが必要です。

義務化対応の体制整備については、カスハラ義務化で「準備した気」になる前に確認すべきこともご参照ください。

現場が「正しく動ける」ようにするために必要なこと

NG対応を「知っている」ことと、実際の場面で「しない」ことは別の話です。

カスハラが発生した瞬間、スタッフは冷静に知識を引き出す余裕がありません。その場で正しく判断できるように、事前に繰り返し練習しておく必要があります。

必要なのは、3つの準備です。

1. エスカレーション基準の取り決め
「何分続いたら上司を呼ぶ」「どんな言動があったら対応を打ち切る」という基準を、チームで共有しておきます。

2. 記録フォーマットの用意
発生時にすぐ記録できるフォーマットを事前に準備し、スタッフに周知します。

3. ロールプレイによる訓練
NG対応が起きやすい場面を実際に演じてみることで、正しい対応を体で覚えます。一度の研修では定着しないため、定期的に繰り返すことが効果的です。

カスハラ研修を導入する前に整えておくべきことについては、カスハラ研修を入れる前に会社が整えるべき3つのことで詳しく解説しています。

まとめ

この記事のポイントを整理します。

  • カスハラ対応のNG行動の多くは「その場を収めようとした善意」から生まれる
  • 謝り続けることは「認めた」と解釈され、要求をエスカレートさせるリスクがある
  • 一人での長時間対応はスタッフの消耗と問題の長期化につながる
  • その場で要求を飲むことは次回以降のカスハラを招く前例になる
  • 記録がなければ「言った・言わない」になり、組織として対応できなくなる
  • 「また来たら対応する」では繰り返し被害を放置することになる
  • NG対応を防ぐには「知っている」だけでなく、訓練と事前の取り決めが必要

カスハラ発生時の対応研修や、現場向けの体制整備についてご相談がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

参考:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

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