法定雇用率を満たせていないと知りながら、「今期は難しい」「まだ準備が整っていない」と時間が過ぎてしまっている企業は少なくありません。
しかし、未達成の状態を放置することには、具体的なリスクがあります。納付金の負担、行政指導、そして場合によっては企業名の公表——これらは制度として定められた手順です。
一方で、「とにかく急いで採用しなければ」と焦ることもリスクです。受け入れ体制のないまま採用しても、早期離職が起きれば結局また未達成に戻ります。
この記事では、未達成の場合に起きることを正確に整理し、リスクを理解したうえで何から取り組むべきかを解説します。
障害者雇用の「未達成」とは
毎年6月1日時点で、自社の障害者雇用率が法定雇用率(2026年7月以降は民間企業2.7%)を下回っている状態を「未達成」といいます。
自社が対象企業かどうかの確認と雇用義務人数の計算方法については、対象企業と計算方法を解説した記事をあわせてご覧ください。
未達成の場合に起きることは、大きく3つあります。
- 納付金の徴収(常用雇用労働者100人超の企業)
- 行政指導(改善が見られない場合)
- 企業名の公表(最終的な手段として)
未達成の場合に起きること①——納付金制度
障害者雇用納付金制度は、障害者雇用率を達成している企業と達成していない企業との間で、経済的な負担を調整するための仕組みです。
納付金
法定雇用率を達成していない企業(常用雇用労働者100人超)は、不足1人あたり月額5万円の納付金を納付します。
※金額は制度改正により変更される場合があります。随時、厚労省・JEEDの最新の公表資料でご確認ください。
たとえば、雇用義務人数が5人のところ3人しか雇用していない場合(不足2人)、年間では2人 × 5万円 × 12か月 = 120万円の納付金が発生します。
調整金・報奨金
逆に、一定の条件を守ったうえで法定雇用率を上回って雇用している場合は、超過1人あたり以下の金銭が支給されます。
| 区分 | 金額(月額) |
|---|---|
| 調整金(常用雇用労働者100人超) | 2万9,000円/人 |
| 報奨金(常用雇用労働者100人以下) | 2万1,000円/人 |
「納付金を払えば問題ない」は間違い
納付金を納めることで、雇用義務そのものが免除されるわけではありません。
納付金はあくまでも「雇用率を達成している企業との経済的格差を調整するための制度」です。支払いと並行して、行政指導や企業名公表のプロセスは別途進行します。
「納付金を払えば解決できる」という発想は誤りです。未達成の状態が続く限りリスクはなくなりません。
未達成の場合に起きること②——行政指導
納付金制度の対象にならない企業(常用雇用労働者100人以下)でも、雇用率が著しく低い場合や改善が見られない場合、ハローワークを通じた行政指導が行われます。
行政指導の流れは、おおむね以下のとおりです。
- 訪問指導や雇入れ計画の作成命令:ハローワークから、障害のある方を雇い入れるための計画書の作成を命じられます。
- 計画の実施状況の確認:計画に沿った取り組みが行われているかどうかが確認されます。
- 特別指導:計画を提出しても改善が見られない場合、より強い指導が行われます。
行政指導の段階では企業名は公表されません。しかし、指導が続いても改善しない場合、次のステップに進む可能性があります。
未達成の場合に起きること③——企業名の公表
行政指導を経ても改善が見られない企業に対しては、最終的に厚生労働大臣による企業名の公表が行われる可能性があります。
企業名が厚生労働省のウェブサイト等で公表されることで、以下のような影響が生じる可能性があります。
- 求職者に「障害者雇用に消極的な企業」として認識される
- 取引先や顧客からの評価への影響
- 採用ブランド全体への影響(障害者雇用だけでなく、一般採用にも波及することがある)
企業名公表に実際に至るケースは、行政指導を長期にわたって無視し続けた場合に限られます。行政指導を受けた段階で真摯に対応することが、公表を回避する現実的な方法です。
「納付金を払えば問題ない」が間違いである理由
改めて整理します。障害者雇用の未達成に対して「納付金を払えば義務は果たせる」という誤解がありますが、これは正確ではありません。
- 納付金を支払っても、法定雇用率の達成義務はなくならない
- 納付金の支払いと行政指導・企業名公表は、別のプロセスとして進行する
- 納付金はペナルティではなく「調整制度」。雇用を免除するものではない
また、経済的な観点でも「納付金を払い続ける」選択は得策ではありません。年間数十〜百万円規模の納付金を払い続けるより、採用・定着支援に投資するほうが、企業にとっても採用した方にとっても、長期的にはプラスになります。
未達成から脱却するために企業が取るべきステップ
未達成を解消するためには、以下のステップを順番に進めることが有効です。
ステップ1:現状の雇用率を正確に把握する
自社の常用雇用労働者数と現在の障害者雇用人数を確認し、不足人数を計算します。
ステップ2:採用の前に受け入れ体制を設計する
「とにかく採用する」より先に、配属先の業務内容、担当者の設定、現場への説明を整えます。準備なき採用は早期離職を招き、再び未達成に戻ります。
ステップ3:採用チャネルを整備する
ハローワーク、就労移行支援事業所との連携、障害者向け求人メディアなど、自社に合ったチャネルを検討します。
**ステップ4:定着支援まで設計する**
採用後の面談サイクル、業務調整の仕組み、相談体制を事前に設計しておくことで、定着率が高まります。
具体的な準備の進め方の記事では、実務ステップを5段階で解説しています。
まとめ
この記事のポイントを整理します。

- 未達成が続くと「納付金→行政指導→企業名公表」という順でリスクが高まる
- 納付金(不足1人あたり月額5万円・要確認)を払っても、雇用義務は免除されない
- 「納付金を払えば問題ない」は制度の誤解。行政指導は別のプロセスで進む
- 企業名公表に至るケースは限定的だが、行政指導の段階で対応することが重要
- 未達成の解消は「急いで採用」ではなく「受け入れ体制を整えた上で採用」が正解
- 障害者雇用は人数合わせではなく、職場設計である
雇用率の現状把握や、未達成からの改善プランについてお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

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