「何度伝えても動かない」「指示した通りにやってくれない」「同じミスが繰り返される」——発達障害のある社員への指示でこうした悩みを持つ管理職は少なくありません。
ただ、こうした状況の多くは、発達障害のある方の問題ではなく、指示の設計の問題です。発達障害のある方の特性と、一般的な職場での指示の出し方がかみ合っていないことが原因の場合が多くあります。
指示の出し方を変えることは、特別な対応を増やすことではありません。「伝わる指示」を設計することで、発達障害のある方だけでなく、チーム全体の業務効率が上がることもあります。
「なぜ伝わらないのか」がわかれば対応が変わる
発達障害(ASD・ADHDなど)のある方は、曖昧な表現や暗黙のルールを読み取ることが難しい場合があります。多くの職場では「言わなくてもわかること」として伝えない情報が多く、これが指示の齟齬につながりやすくなります。
「伝わっていない」は「理解できない」ではなく、「そのように伝わっていない」という問題です。指示を変えることで、改善されるケースが多くあります。
発達障害のある社員に指示が伝わりにくい理由
曖昧な表現を字義どおりに受け取りやすい
「なんとなく確認しておいて」「いい感じにやっておいて」「早めに仕上げてほしい」——これらは意図を汲んで行動できる人には通じやすい表現ですが、字義どおりに受け取る場合、何をすべきかが判断しにくくなります。
「早めに」は何時までを指すのか、「いい感じ」とはどの状態を指すのか、具体的に示す必要があります。
複数指示を同時に処理しにくい
「これとあれと、あとそれもやっておいて」という複数指示は、優先順位の判断が難しくなりやすいです。1つずつ、順番に指示を出すことが基本です。
優先順位の判断が難しい
複数の業務が重なった場合、「どれを先にやればいいか」の判断が難しくなることがあります。あらかじめ「今日はAを最優先、Bは午後でいい」と伝えておくことで、迷いを減らすことができます。
伝わる指示の作り方——5W3Hで具体化する
指示を具体化するフレームとして「5W3H」が有効です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Who(誰が) | この担当はあなたです |
| When(いつまでに) | 今日の15時まで |
| Where(どこに) | 〇〇フォルダに保存する |
| What(何を) | 先週の集計ファイルを更新する |
| Why(なぜ) | 明日の会議で使うため |
| How(どうやって) | Excelの〇〇シートを開いて数字を入力する |
| How many(どのくらい) | 3行分 |
| How much(どの程度) | ファイル名は変えなくてよい |
すべての項目を毎回伝える必要はありません。「期限」「完了の判断基準」「何が終わったら完了か」を明確にするだけでも、大幅に改善されることがあります。
手順書・チェックリストの活用
定型業務については、手順書とチェックリストを用意することが効果的です。
手順書のメリット:
- 担当者が変わっても同じ品質で対応できる
- 「どこまでやったか」を自分で確認できる
- 質問の回数が減る
チェックリストは「✅ が全部埋まったら完了」という判断基準を明確にします。「終わった」が自分でわかる仕組みを作ることで、確認作業の頻度も落ち着きやすくなります。
最初から完璧な手順書を作る必要はありません。業務を始めながら一緒に作っていく形が現実的です。
口頭指示と文書指示の使い分け
口頭だけで伝えた指示は、記憶に残りにくく、後で確認できません。特に作業が複数のステップにわかれる場合は、文書(メモ・チャット・紙)でも残すことが有効です。
実務上の目安として、
- 短い単発の作業 → 口頭でも可。ただし「終わったら教えて」を添える
- 複数ステップの業務 → メモや手順書を渡す
- 重要な変更・締め切り → チャットやメールで記録を残す
「伝えた」ではなく「伝わった」を基準にした指示の設計が求められます。
指示後のフォローアップ
「できましたか?」の確認だけでは、詰まっている箇所が見えません。「どこかで詰まりましたか?」「どのステップまで進みましたか?」という問いかけで、問題が起きている場所を早めに発見しやすくなります。
うまくいかなかった場合は、指示の出し方を見直す機会として活用します。「なぜうまくいかなかったか」ではなく、「指示のどこが伝わりにくかったか」を確認することで、次の指示の精度を上げていくことができます。
まとめ
発達障害のある社員への指示で大切なことを整理しました。
- 「なぜ伝わらないか」は指示の設計に原因があることが多い
- 曖昧な表現・複数指示・優先順位の不明確さを避ける
- 5W3Hで指示を具体化する
- 手順書・チェックリストで「終わり」を見える化する
- 口頭だけでなく、文書でも記録を残す
指示を変えることが、発達障害のある方が力を発揮できる環境づくりの第一歩になります。
指示の出し方や発達障害のある社員への関わり方について相談したい場合は、お気軽にご連絡ください。